和を以て (PHPより抜粋)

 戦争、天変地異、疫病の流行。社会を襲う未曽有の危機は、きまって不意に訪れる。そして人々は不安と恐怖から理性を失い、狂奔した行動に走る。
 必需品の買い占めに走ったり、他国民を非難したり、人として見苦しい振舞いをしてしまう。恐ろしいのは移ろいやすい人の心。平時であれば自制心を保つところが、非常時となるとたががゆるみ利己的になる。おのずと下品になっていく。
 国民の品格が問われるのは平時よりもむしろ、こうした苦難の時なのではないだろうか。
 元来、日本人の素晴らしさは和を貴ぶところにある。だからこそ、秩序を守りながら衆知を集め、危機を打開することができる。
 それは数多くの被災地でも、私より公の事を優先し、他人への思いやりを忘れない国民の行動ひとつひとつに、
存分に発揮されていたといえよう。
 和の伝統精神を以て、これまで通り節度を失わず、世界の模範となる国民でありたい。競い合うより、ひとつになって協力し合うべき時代に来ている。
 その魁として日本人は成熟した大人の国民でありたい。

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