娘とひつまぶし

(ニューウェイブ誌2016年9月号コラムより)

私事であるが、娘が今年の4月に就職し、本人たっての希望もあり初めての一人住まいも同時に始めた。案の定5月にカベにぶつかり「周囲の目が痛い」などと自信を無くしている様子。大学時代まで吹奏楽も続けていたし、色々なアルバイトで友人も多く、人とのコミュニケーションは上手な方だと見ていて安心していたのだが……やはりアルバイトと本職は責任の重さが違う。自分はまだまだ半人前だと自覚し謙虚に学ぶ心を持って初めて成長が始まる。自分は出来る人間だと錯覚した時点で成長は止まる。

カベといえば、私も随分昔に営業の担当ルートの変更で大きなカベにぶち当たった経験がある。今思えば貴重な経験であったと言葉に出せるが、その時は必死であった。振り返ると乗り越えることが出来た原因は、周囲の人のアドバイスであった。「神様はその人が乗り越える事ができる高さのカベしか与えない。成長できるようにその人の実力の少しだけ高いカベ(難題)を人生の必要な場面で与えるのです。決して越えられない高いカベは与えません。それはある意味神様のあなたへの期待値です」という言葉であった。同時に、気晴らしの方法などのアドバイスもいただき何とか乗り越えることが出来た。又合わせて「悩んで動きがとれなくても、逃げずに真正面から対していれば、時の力で周囲の状況も変わってくる」いわゆる「慣れる」という人間の持つ万能の力を実感した人生の一場面でもあった。

親バカながら、娘に名古屋名物の「ひつまぶし」を御馳走し、お酒の力も借りて父の経験を力説したが……娘はどうも耳半分の様子であった。

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