(2020年1月号コラムより)
新年を迎えるにあたり、人間の限界について考える機会があった。新年会でのメーカー様のお話であるが、最近特に気になるのは、若い人に仕事の指示をしたときに、その場で「その指示が自分にできるかどうか」を判断して、難しそうな顔をする場面が見受けられるとのことである。時にはやってもいないのに「できません」という否定的な答えがすぐに帰ってくる事もあるという。上司もその人なら出来ると期待して指示をするのであり、ひと昔前なら指示された仕事はとりあえず「はいわかりました」と受けて、悩みながら、周囲の人に相談、先輩に教示を受けながら結果を出してきた。
思うに、おそらくスマホを筆頭とする大量の情報の中に答えを探し、できるかできないかの判断材料としているのではないか。ある意味、あふれる情報の中で答えを探す習慣がついており、それが仕事という自分の成長の場でも自分を制限してしまっている。
しかしこれでは、その情報の提供者以上の成長は望めない。かつて私が営業マンであったころ、お得意先様の社長室に飾ってあった駒にこうかかれてあった。「できないという前に、できる方法を考えよう」いまに思えば、その駒の威圧で、どうも某社長のお願いは、いつも断れなかった気がする(笑) しかし思えばこれは名言で、その後の私の人生訓としてしっかり残っている。
心理学的には、人間の顕在能力はわずか5%で まだ95%の潜在能力を持っているという。真偽の不明なスマホの情報で判断し、自身の顕在能力の範囲内で物事を判断し、まだ20倍もある潜在能力を封印したまま人生を送るのは もったいないと思う。年末に日本中に感動を与えたラグビーもそうだが、スポーツ界での一人者は皆、自分の限界に常に挑戦し続けている。限界は目に見えるものではなく目には見えないものだと思う。